手話を考えるフォーラム2013 in横芝光町 本文へジャンプ

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今年の手話を考えるフォーラムは9 月7 日(土)・8日(日)、横芝光町文化会館を会場として開催されました。主管となった東総支部の実行委員会は、秋元実行委員長、落合事務局長の体制を整えて開催準備に邁進。大会当日は参加者全員に地元特産の新米2 合のプレゼントを用意するなど、おもてなし精神を遺憾なく発揮しました。更に1 日目は、準備に追われた役員、要員に手作りのカレーライスが振る舞われるなど、細やかな心遣いに全員がニコニコでした。今年度のフォーラムは会場のキャパシティの関係で、参加定員は約200 人とされたこともあり、例年に比べてこぢんまりとした規模となりましたが、内容は密度が高く、新たな障害者総合支援法における手話通訳派遣の仕組み(モデル要綱)や養成講座の新カリキュラムについての全体講演、4 つの分科会に分かれての討議など、参加者には大いに勉強になったことと思います。
恒例の1 日目夜の交流会は、横芝光町屋形海岸にある会員制のリゾートマンション「テンダーヴィラ九十九里」で開催。参加者はホテル差し回しのバスにそろって乗車し、遅い日没の中を会場を出発してホテルに直行しました。全体講演の概要を3 ページに掲載しました。分科会については後ほど掲載する予定です。来年のフォーラムは総武支部主管で開催されることになっており、総武支部では実行委員会の立ち上げと開催準備を急いでいます。





講演概要
意思疎通支援事業モデル要綱について
講師:清田 廣氏((社団)大阪聴力障害者協会 副会長)

@2013 年4 月1 日より実施される「障害者総合支援法」における地域生活支援事業の意志疎通支援事業について、3 月27 日に厚生労働省より市町村・都道府県の実施要綱モデルが通知された。障害者総合支援法では、手話通訳の養成、派遣、設置がすべて必須事業に位置付けられ、今後の発展が期待できる状況が生まれた。
A しかし、発展するかどうかはあくまでも私たちの運動で決まっていくものである。私たちが、事業実施にあたって、必要な人材の確保や政策的取り組みが出来る能力を備えているかどうかが鍵になる。これをしっかりと認識し、現在実施している内容を踏まえ、市町村・都道府県のモデル要綱の内容を把握した上で、市町村行政と交渉していかなければならない。特に、広域派遣についてはしっかりと確認していく必要があるだろう。
 Bこのモデル要綱(以下「要綱」)は、3 年間の実施後に見直すこととされている。要綱に基づいて実施される事業は聴覚障害者のコミュニケーションを保障するものであり、自らの生活、命、財産に大きな影響を及ぼす。これをしっかりと自覚し、自らの手で万全な事業にしていくための強い決意を持って取り組む必要がある。これから必要なことは、養成、派遣、設置について、常に問題意識を持って注視し、改善点を見いだして意見を集約し、3 年後の見直しの際に提言が出来るようにすることである。
 C手話通訳事業の設置者については、全国では約30%弱の設置率に止まっている。大阪は100%の設置状況だが、設置形態は正職員、嘱託、非常勤、時間単位のアルバイトなど多様である。設置者も手話通訳が必ず出来る者とは限らない。市町村の設置に対する考え方が統一されておらず、設置通訳は軽い職種であると受け止めている市町村が多い。
 D要綱の第2 条(5)に、意思疎通支援事業が円滑に行われるよう運営委員会の開催が明記されており、運営委員会の構成員については第20 条の(1)で、聴覚障害者団体から選出された者、又は聴覚障害者が明記されている。したがって、市や社会福祉協議会などの派遣の運営の場に運営委員会を設置させ、聴覚障害者の意見を反映させる必要がある。この運営委員会で、聴覚障害者が当事者として主体性を発揮することが出来れば、聴覚障害者の立場を尊重した派遣業務が行われているかどうかも把握できる。この運営委員会に聴覚障害者が当事者として出席するようになると、主体者としての力量が必要になる。協会も学習、研修を行い、役員の資質向上に努めなければならない。
 E第17 条(派遣の報酬等)については、派遣事業には自治体直営と委託があるということを理解しておく必要がある。自治体直営ならば、派遣の報酬は意思疎通支援者に支払う単価だけで済む。しかし、団体が委託事業として実施する場合は、@意思疎通支援者に支払う報酬、A事業所の担当職員の人件費、B事業所の必要経費、C事務費等を算出した上で、単価の設定が必要。協会委託の場合も、@〜Cの費用を算出して単価を決めて交渉することになる。
 Fモデル要綱では、手話通訳を担える者として、@手話通訳士、A都道府県登録手話通訳者(政令指定都市、中核市の登録手話通訳試験合格者を含む)、Bこれらと同等と認められる者としている。手話奉仕員はモデル要綱で削除されているが、地域生活支援事業では、「当面、手話奉仕員も手話通訳を担う」と表記されている。
 Gモデル要綱のねらいは、全国市町村の格差解消と必須事業としての派遣、養成、設置の全国市町村の完全実施である。格差の主なものは、(1)派遣の範囲と内容、(2)報酬、(3)手話通訳者のレベルの3つで、大阪でも市町村間で格差がある。(1)、(2)はモデル要綱を楯にして、市町村と交渉して統一の方向で取り組むことが出来るが、(3)の手話通訳者のレベルは、手話奉仕員養成の講習時間の統一と、講師のレベルアップを図らないと、手話通訳者養成へ進めることが出来ない。
 H派遣のモデル要綱は出来たことは、養成にも良い影響を及ぼす。大阪では新たな養成体制を築くための検討が必要になってきている。必須事業になったことは、協会の責任も重くなったということ。これをきちんと受け止めて、協会が周囲から評価されるに足りる組織となるため、体制の整備を急がなくてはならない。         
機関紙”みみしお”10月号より転載